SOCIAL INSIGHT 2023.07.21 TEXT BY SHUSAKU HIROTA SERIES / アートと社會(huì)の方程式

いま、アートは社會(huì)とどのようにつながっているのだろうか？　世界中のイノベーション?リサーチを起點(diǎn)に企業(yè)のブランド開発を手がけるHengeのファウンダー、廣田周作がアートと社會(huì)の“方程式”を解き明かす本連載、初回は「美術(shù)館とウェルビーイング」をテーマに、美術(shù)館が醫(yī)學(xué)研究をもとにどうやってアートと健康を紐付けようとしているのか読み解く。

Photo: REUTERS/Aflo

いま、アートが社會(huì)や人間へ及ぼす影響や、その有効性が注目されています。本連載「アートと社會(huì)の方程式」は、これからのアートが社會(huì)とどのように関わり、どのような価値をもたらしうるのか考えていくもの。第一回は「アートと健康」をテーマに、健康へのフォーカスを進(jìn)めている美術(shù)館や博物館の動(dòng)きを掘り下げていきたいと思います。

言うまでもなく「美術(shù)館」とは美術(shù)品を収集?保管?展示する施設(shè)を指しますが、近年はその役割も変化しつつあります。ミュージアムショップの設(shè)置やカフェ／レストランの運(yùn)営、あるいは子ども向けワークショップの開催をはじめ、美術(shù)館は多くの機(jī)能をもつようになり、さまざまな目的をもった人々が集まる場(chǎng)となっているからです。こうした動(dòng)きを経て、近年社會(huì)における美術(shù)館の役割も変わろうとしています。

とりわけ現(xiàn)在美術(shù)館が注力しはじめているのが、健康やウェルネス、ウェルビーイングに関わる取り組みです。近年アートとウェルビーイングに関する研究が進(jìn)んでいったことで、美術(shù)館／博物館が積極的にウェルビーイングを施策のなかに取り入れているわけです。

アートは健康にロバストなインパクトを與える

以前からアートと健康に関する調(diào)査や研究は行われてきましたが、なかでも大きな影響力を與えたのが2019年11月に発表されたWHOによる報(bào)告書『What is the evidence on the role of the arts in improving health and well-being? A scoping review』です。このレポートのなかで、WHOはアートが健康に寄與すると結(jié)論づけています。

これまでもさまざまな地域や自治體でアートとウェルビーイングをつなげるような取り組みは行われていたのですが、必ずしも両者の関係が決まったガイドラインのもとで定義づけられているわけではなく、ときには関係性が曖昧なものもありました。アートの有効性が信じられている一方で、一貫した政策へ落としきれないことが問題となっていたんですね。

そんななか、WHOのレポートはこれまでの研究から得られたエビデンスから「アートは精神と身體雙方の健康にロバストなインパクトを與える（a robust impact of the arts on both mental and physical health）」と言い切ったことでアートと健康をつなぐような流れを加速させたと考えられます。このレポートは約900本の文獻(xiàn)を參照したもので、これまでも言及されることがあった精神疾患との関係性をはじめ、非伝染性の疾患や神経疾患の予防や治療効果の有効性にも言及されています。個(gè)人や地域、國(guó)レベルでアートと健康をしっかりと結(jié)びつけていくことがレポートのなかでも奨勵(lì)されており、実際にこのレポートを経て美術(shù)館や自治體はもちろんのこと、政治家もアートを政策に落とし込みやすくなったと言われています。

WHOのレポートは、これまで行われてきた研究を統(tǒng)合し構(gòu)造化することで統(tǒng)合的なストーリーを描いたところが面白い點(diǎn)だと言えるでしょう。病気の“予防”になることは直感的にもなんとなく理解できますが、神経痛を和らげるなど「治療に効果がある」と証明されたのは非常に面白いですね。

Photo: Benjamin Elliott/Unsplash

歌やダンスの効能を問う研究も登場(chǎng)

もちろん、これまでの研究でもさまざまな取り組みが行われてきました。たとえばキングス?カレッジ?ロンドンは20年にわたってアートと健康の関係性に関する研究を進(jìn)めています。2012年には研究者と臨床醫(yī)を含めた専門チーム育成への投資を行い、2014年には「蕓術(shù)、健康、ウェルビーイングのための全政黨議員グループ（The All-Party Parliamentary Group for Arts, Health & Wellbeing, APPGAHW）」を結(jié)成しています。同年にはCultureCase.orgというウェブサイトを立ち上げ、アートや文化が健康とウェルビーイングに與える影響について、世界中からレビューを集める取り組みを進(jìn)めています。

APPGAHWが2017年に発表したレポート『Creative Health: The Arts for Health and Wellbeing』は、両者の関係について全國(guó)的な意識(shí)の高まりを調(diào)査し、政策や実踐を進(jìn)めるための提言を行うものとして注目されています。そして2019年にキングス?カレッジ?ロンドンはユニバーシティ?カレッジ?ロンドン（UCL）とともに新たな研究プロジェクト「SHAPER」を結(jié)成しました。

これは史上最大規(guī)模の研究グループとされており、身體的?精神的健康に対するアートの影響を論じるものです。醫(yī)學(xué)研究の支援などを行う民間団體Wellcome Trustから200萬ポンド（現(xiàn)在のレートで約3.6億円）の助成を受けたことも大きな話題となりました。その後も2021年に同プロジェクトはBreathe Arts Health Researchとともに、COVID-19の感染拡大に伴うロックダウンによって対面セッションを行えない女性たちに向けたオンラインプログラム「Melodies for Mums」を発表するなど、活動(dòng)を続けています。

もっとも、キングス?カレッジ?ロンドンのプロジェクトにおける「アート」は絵畫や彫刻などに限らず、歌唱やダンスを含むものでもあります。「Melodies for Mums」のような産後うつに対する歌唱の研究や、パーキンソン病に対するダンスクラスの有効性、美術(shù)館訪問の有効性など、広範(fàn)なテーマを扱いながら、ウェルネスやウェルビーイングへの寄與はもちろんのこと、病気の治癒にも貢獻(xiàn)する可能性を研究している點(diǎn)がその特徴といえるでしょう。

「Melodies for Mum」は10週間の対面式グループ歌唱プログラム。週1回のセッションを通じて、感情的?精神的なウェルビーイングの向上が図られている。VIDEO COURTESY OF BREATHE ARTS HEALTH RESEARCH

20世紀(jì)は運(yùn)動(dòng)、21世紀(jì)は文化

こうした動(dòng)きに後押しされるようにして、美術(shù)館がウェルネスやウェルビーイングを取り入れる動(dòng)きも進(jìn)んでいます。比較的早い段階から施策に取り組んでいるのは、カナダのモントリオール美術(shù)館です。同美術(shù)館は2018年にカナダ醫(yī)師會(huì)（MdFC）と提攜し、患者の回復(fù)を促進(jìn)する手段のひとつとして、美術(shù)館への訪問を醫(yī)師が処方箋に書けるようになりました。薬を出すのと同じように、美術(shù)館へ行くことを、醫(yī)師が治療の一環(huán)として患者に推奨できるようになったわけです。

このプロジェクトの第一段階を通じて、モントリオール美術(shù)館の常設(shè)展と企畫展への入場(chǎng)チケット（大人2名と17歳以下の子ども2名まで入場(chǎng)可）を醫(yī)師ひとりあたり50枚まで処方箋として発行できるようになりました。美術(shù)館の訪問が「処方」として扱えるようになったことはもちろん、患者本人だけでなくその家族も入場(chǎng)できることで市民と文化の関わりも促進(jìn)されたといえそうです。

「20世紀(jì)における運(yùn)動(dòng)のように、21世紀(jì)には文化が健康へ寄與することになると私は確信しています。スポーツがフィットネスへ貢獻(xiàn)したように、文化的な體験が健康とウェルネスへつながっていくのです」

當(dāng)時(shí)同美術(shù)館のチーフキュレーターを務(wù)めていたナタリー?ボンディルはプロジェクトの発表に際し上記のように語っていました?，F(xiàn)代のわたしたちにとって運(yùn)動(dòng)と健康の結(jié)びつきは疑いようのないものだと思いますが、フィットネスという言葉が健康とつながる重要な概念だとされたのは20世紀(jì)のことです。薬だけではなく運(yùn)動(dòng)も重要だと言われるようになり、運(yùn)動(dòng)を通じて健康を促進(jìn)するような流れが生まれたわけですよね。同じように、21世紀(jì)は文化と健康の結(jié)びつきが強(qiáng)まっていくとしたら面白いですよね。

13,000平方メートルの展示スペースを誇るモントリオール美術(shù)館は、カナダ最古の美術(shù)館として知られている。Photo: Look/Aflo

美術(shù)館がウェルビーイングへ注力

カナダ醫(yī)師會(huì)の副會(huì)長(zhǎng)エレーヌ?ボワイエは『Montreal Gazette』誌において、こうした取り組みは副作用が生じない処方であり、美術(shù)館の訪問はコルチゾールとセロトニンのレベルを高め、ホルモンの分泌を促すと主張しています。運(yùn)動(dòng)によってもホルモンは分泌されますが、高齢者になると運(yùn)動(dòng)すること自體が難しくなっていくもの。他方で美術(shù)館は年齢を問わず訪れられるため、高齢者に対しても処方できる點(diǎn)が魅力的だと考えられます。

モントリオール美術(shù)館とカナダ醫(yī)師會(huì)の取り組みは、ほかの國(guó)や地域にも影響を與えています。2022年にはベルギー?ブリュッセルのブルグマン大學(xué)病院の研究チームが6カ月間の試験的プロジェクトを開始し、同病院の患者は、友人や家族と一緒にブリュッセルの文化施設(shè)を5回まで無料で訪れられるようになりました。これは薬物療法やセラピーといった既存の処方に加えられるもので、比較的軽度の燃え盡き癥候群やうつ病、不安癥を?qū)澫螭趣筏郡猡韦坤饯Δ扦埂?/p>

他方で、フランスではパレ?ド?トーキョーがアートを通じたウェルビーイングへの貢獻(xiàn)やソーシャルインクルージョンを目的としたケアセンター「HAMO」をつくろうとしています。700平方メートルの敷地內(nèi)にはワークショップやミーティング、アーカイブのためのスペースが設(shè)けられており、定期的にウェルビーイングに資するプログラムが実施されていくそうです。

具體的なプログラムの內(nèi)容はまだ明らかにされていませんが、精神科醫(yī)やアートセラピストといった専門家たちがクリエイティブなアクティビティやウェルビーイング、ヘルスケアに焦點(diǎn)をあてたワークショップを開催するとされています。アートセラピストが常駐するウェルビーイング施設(shè)が文化施設(shè)の中につくられるのは初めてのことだそうです。

ヨーロッパ最大規(guī)模の美術(shù)館のひとつとして知られるパレ?ド?トーキョーには、HAMOのみならず、ギフトショップやレストランなどさまざまなスペースが設(shè)けられている。Photo: HEMIS/Aflo

美術(shù)館は社會(huì)へ開かれてゆく

もっとも、現(xiàn)時(shí)點(diǎn)ではすべての國(guó)でこうした取り組みが進(jìn)んでいるわけではありません。たとえばイギリスではそもそも無料で入れる美術(shù)館が多いので入場(chǎng)券を処方する仕組みは広がりませんでしたし、それぞれの國(guó)における美術(shù)館やアートの位置づけによってその取り組みの內(nèi)容も変わっていくはずです。あるいは、アートとウェルネスは古くからつながっていると考えることもできるかもしれませんが、西洋醫(yī)學(xué)やサイエンスの領(lǐng)域のなかで、アートの効能が測(cè)定可能なものとして扱われ、制度化されたことは大きなインパクトをもっているといえるでしょう。

アートと健康の関係が研究されていくと同時(shí)に、美術(shù)館が従來の役割を超えて市民のウェルネスやウェルビーイングにも貢獻(xiàn)する場(chǎng)とされるようになった背景には、コロナ禍の影響もあるはずです。実際にブリュッセル市のプログラムは、ロックダウンによって失われてしまった社會(huì)のつながりを取り戻すことを目的のひとつとして掲げており、文化施設(shè)を社會(huì)へ再び開いていくことが期待されています。

特に日本では、良かれ悪しかれ美術(shù)館は社會(huì)から隔絶された特別な場(chǎng)として捉えられることもあったかもしれませんが、研究を通じてアートと健康のつながりが分析?言語化されていくなかで、むしろ美術(shù)館こそがアートと健康をつなぐ重要な拠點(diǎn)となっていくことも考えられます。これからの美術(shù)館は、測(cè)定可能な役割を擔(dān)う場(chǎng)所として、社會(huì)にもっと開かれていくのです。

Edit & Text: Shunta Ishigami

あわせて読みたい

ビートルズが日本のホテルで描いた絵畫が約2億円で落札！ 作品中央にはテーブルランプの痕跡 T&Y GALLERYがLAのアート?ディストリクトにオープン！ 「日本と海外の架け橋に」 香港の現(xiàn)代美術(shù)館M+、巨匠ザオ?ウーキーの貴重な作品12點(diǎn)の寄贈(zèng)を受ける リビア大洪水で古代遺跡から新たな建造物を発見。老朽化したダム決壊が引き金 イスラエルの空爆で多數(shù)の文化遺産に被害。ガザ地區(qū)の歴史的な宗教施設(shè)や遺跡、博物館なども対象に

相關(guān)知識(shí)

高齢者の「デジタルデバイド」を解決するには？
酵素の美容?健康効果とは？酵素のチカラを徹底解説！
「フィットする」ではない “fit” の意味とは？
腸活に効果のある酵素とは？健康への効果や効果的な摂取方法も紹介
體脂肪率とは？健康への影響やBMIとの違い、減量のポイントを解説
男性の標(biāo)準(zhǔn)體重とは？計(jì)算方法と標(biāo)準(zhǔn)體重を目指すためのポイント
サステナ英語レッスン「3.すべての人に健康と福祉を」人生を救う“最後の砦”
酵素とは？その成分と効果を徹底解説！ダイエット?美容?健康
醫(yī)學(xué)的に理想の體重とは
「體調(diào)管理に努める」って何をする？毎日の體調(diào)管理のポイント

網(wǎng)址: 21世紀(jì)の「健康」を支えるのはアートだ！【アートと社會(huì)の方程式 #1】 http://m.u1s5d6.cn/newsview1221314.html